SSW19
2019年11月9日(土)
伊東歌詞太郎さんのステージを見てきました。
この日のライブも本当に最高だった。最高に楽しかった。
でも、こんなにも悔しいのは久しぶりだ。
この日のステージを見られたのが、あの場にいた人たちだけだなんて。
会場はその名の通り、大阪城公園の中にある野外ステージ。
駅から出たら真正面に大阪城がドーンと綺麗に見えたの、テンション上がったな。
会場に入る際、入場口のすぐ近くにあるバックステージに繋がる扉が少し空いていて、そこからギターの練習をしている彼の後ろ姿が見えた。
中段の真ん中辺りの席に腰を下ろし、一息ついて会場をぐるりと見回した私は、上野恩賜公園の野外ステージを思い出していた。
この日の天気は晴天。
昼間は動くと少し汗ばむほどの気温だったが、陽が落ちてくるに従いだんだんと今が11月であることを思い出させるように気温は下がっていった。
歌詞太郎さんが登場したのは18時頃。
その頃には辺りはだいぶ暗くなりステージにはライトが灯っていた。
直前に演奏していた方が捌けると、入れ替わるようにふらっとステージ袖から歌詞太郎さんが登場。
いきなりステージの前方に立ち、確かめるように短く声を出す姿を見て、
アカペラやるつもりなのかな?
弾き語りフェスだけどアカペラしちゃうのかな?
歌詞太郎さんらしいな
なんて微笑ましく思ったりしていた。
そのあとは、もちろんギターのチェックも。
ツイキャスのときなどに最初に弾いてるあのメロディーだけで一気にこちらのテンションが上がる。
全て完璧なことを確認してから一旦捌け、
それからしばらくして再びステージに登場。
1曲目は「北極星」だった。
普段聴いているのよりもかなりアップテンポに感じた。
彼は左脚を軸にして右脚を組んで座り、右腿にギターの身体部分を置いて固定するような形で弾いていた。
…うーん、文字で書くとまどろっこしいな笑
ギターを弾きながら歌を歌う彼を見たのは初めてだったけれど、
首を揺らしたり軸にしている左脚でリズムを取ったりしている姿を見て、
ギターでさえも、この人は全身で音を奏でているのだな、と思った。
間奏では常に唇を「んむっ」と内側に入れていたけれど、あれは癖なんだろうか。他のとこでも見かけたんだよな…(かわいい)
楽しそうに、時折笑いながらギターを弾いている姿に胸が熱くなった。
1曲終わるといきなり「楽しさが…プラスオンッ!!」とだけ叫んで客席が一瞬「??」ってなってたの、ちょっとおもしろかったな。
『歌を歌うことはもちろん楽しいけれど、ギターを弾くことで楽しさがさらにプラスオンされてる!』と遅れて解説。
見てれば楽しそうなのはめちゃくちゃ伝わってきた。
『いつも来てくれてる人、ありがとう。
はじめましての人は、名前だけでも覚えて帰ってください』
そう簡単に自己紹介してから2曲目の演奏が始まった。
「さよならだけが人生だ」
弾き語りで聴きたいな、と思っていた曲だから嬉しかった。
いつもの、美しく芯のある歌い方が大好きなのだけれど、ギターを弾きながらアツく歌うのもまた違った良さがあるな、と思った。
『生きてたら辛いこととか苦しいこととか一杯あるよね。僕はそんな時、この曲を歌って乗り越えてきました。』
そんな言葉のあとに弾き始めたのは
「雨ニモ負ケズ」
前奏で何の曲かを理解した瞬間、フラッシュバックのように上野のときの光景が目に浮かんだ。
あの時も確か同じ曲順で、でもあの時は出だしの声が、こちらが動揺するほど震えていて。
落ち着かせてから歌い出すことだって出来たはずなのに、それをせず、そのまま歌い出した彼を見て馬鹿みたいにボロボロ泣いたこと、今でもハッキリ思い出せる。
今まで彼は、一体どんな気持ちで、どれだけこの曲を歌ってきたのだろう。
あの日から、もうすぐ2年が経つ。
『今日このステージを見たとき、上野の野外ステージを思い出したんですよ。こことすごく似ていて。
でもあそこで歌った時、僕は…少し歌いづらい状態だったんですね。
歌を伝えたくてマイクなしで歌ってみたら、全然響かなくて。
人って意外と音を吸うんですよ。やっちまったなぁと思った。
だから今日、この後もう一度チャレンジさせてください』
覚えている限りのニュアンスだけど、こんなようなことを言っていた。
やっぱり、彼もあの日のことを思い出していたんだなと思ったら心臓の奥がキュッとなった。
でも、そうだよね、思い出すよね。
本当にそれくらい似ていたから。
あの日あの場にいた人たちは、みんな思い出していたんじゃないかな。
続けて歌った3曲目は
「帰ろうよ、マイホームタウン」
あぁ、もう。
本当に、あの日を思い出してしょうがなかった。
「あぁ寒いな、でも平気」
そう。あの日も、とにかく寒かった。
でも彼の歌を聴いているときだけはその寒さが気にならなかったんだよな。
最後の「ららら」
ちゃんと彼に聴こえていたと思う。
あの日も、彼に届けたくて精一杯声を出したな。
演奏が終わると、もどかしげにギターとピックを置きステージ前方に。
ステージの縁ギリッギリに立った彼が大きく息を吸い込み歌い出したのは
『また会えたら あなたのこと思うよ
その涙も笑顔も見せてくれて どうもありがとう
また会いたい あなたにまた会いたい
夢のようなこの”夜”(この時はSSW、と早口で言っていた)
魔法は解けないだろう?』
息を呑む
とはまさにこういうことを言うんだな、と思った。
永遠のようにも、一瞬のようにも感じる時間だった。
長い両腕を左右に大きく広げ、彼は全身で音を奏でていた。
彼の歌う姿を見ていて、いつも「全身で音を奏でているみたいだな」と思うけれど、この時は「みたい」じゃなかった。
本当に、彼の全身から音が鳴っていた。
細く長くしなやかに動くその手足を目一杯使って歌う彼自身の身体は、まさに楽器そのものだった。
凄かった。
圧倒された。
…あんなにも衝撃を受けたのに、それを上手く表現できないのが悔しくて堪らない。
違うんだ、こんな、こんな簡単な一言で済むようなものじゃなかったんだ。
見て欲しかった。
彼を応援する全ての人に、この日の彼を見て欲しかった。
あの日と、全然違ったよ。
違ったことが嬉しくて、涙が出そうになった。
野外でもこんな風に、こんなにも彼の声は伸びやかにどこまでも響くのか。
これが彼の本当の”声”なのかなって、そう思ったら身体が震えた。
『ありがとうございました、伊東歌詞太郎でした!
名前だけでも、名前だけでも覚えて帰ってください!』
そう叫んで駆け足で舞台袖に帰っていく後ろ姿を、半ば呆然としながら見送る。
姿が見えなくなる直前、ガッツポーズしてるように見えたのは気のせいかな?
こんな、こんな情報過多なステージを、こんなにもあっさり見せてしまうなんてズルすぎる。
「伊東歌詞太郎」という人はとんでもないな。
自分はものすごい人を応援しているのだな。
そう、改めて心から感じた日になった。